色彩文化

発表日:平成13年6月13日
発表者:田中 裕美
《動機》

  ヨーロッパに行った際、色の使い方で日本との差異を感じた。 民族や国によって色彩感覚に違いがあるならば、グローバル化が進む現在、 様々な人(民族)のニーズに応えるためには知っておかなければと思った。 今後、"居心地のいい空間"を作っていきたい私にとって、 より多くの人がそう感じてくれるような空間演出を考えていく上で、 この色の問題が重要であると思い、今回のテーマにとりあげた。


☆ラテン系
ブルネット・タイプ ⇒ 
  • 皮膚が浅黒い

  • 髪と目の色が黒(または黒茶色)

  • 背丈が低く、ずんぐりしている
      <典型> イタリア、スペイン、ラテンアメリカの人々

    ●暖色系嗜好 特に赤、橙、黄
            ⇒豊かな太陽光線によって赤色視覚が発達した。 そのため赤を見ると歓喜し、その性格は外交的、率直、衝動的なのである。



☆北欧系

ブロンド・タイプ ⇒ 
  • 皮膚が白い

  • 髪は金髪(亜麻色)で目が青い

  • 背丈が高い <典型> 北欧人(北欧ゲルマン系)、スカンジナビア人(スウェーデン人、ノルウェー人、フィンランド人、デンマーク人)、アイスランド人

    ● 寒色系嗜好 特に薄紫、スカイブルー、エメラルドグリーン などのパステル調
            ⇒北南両極地帯を頂点とする、高緯度地方では、 特有の白の影響から、紫、青、緑など短い波長に良く反応するようになる。 太陽光線の乏しさから、目も弱くなり、色彩の好みも純色から、 パステルトーンに変わる。

    以上のことから、わたしたちの色彩嗜好はまさに、太陽光線と空気の透明度によって影響されているということがわかる。高緯度地方へ近づくにつれ、純色からパステルトーンへと変化する。


☆日本人の色彩感覚

〈着物時代〉

  • 日本人の色彩嗜好 「雅やかな色」、「おだやかな色」、特に青系   ⇒日本は空気中の水分が特に多い。おおげさにいえば、日本人は常に霧の中で色を見ている状態である。 このことから、霧がかかったような、少しぼやけた色を好むのである。

  • 5世紀半ば  ⇒染色の技術者が大陸から渡来。赤、黄、緑、青などの色糸をつくった。
    染色の無地染めでは、赤は茜草、青は山藍、黄は刈安、 紫は紫根といった染料が使われた。

  • 過去の日本人の衣服をみてみると、一般庶民のそれは、青系統が多い。 江戸時代、田舎侍のことを浅黄裏と軽蔑したのは、 この浅黄(浅葱)という色がブルー系統の色であり、 この色が平凡な大衆色であったことを告げている。 藍色が大衆色となった理由としては、染めやすく、褐色しにくく、 その上安価な染料であったことがあげられる。

  • 木の色 日本人は、古くから、木の家に暮らしてきた。 このことから、木の色も日本人にとっては落ち着く色として好まれる。 また、振袖や、能装束などの呉服の色は、木の色との調和を考えて演出された。
    ⇒青系統、木の色はこういった歴史的背景による、伝統的安定感から、 日本人に好まれている。

〈現代〉

  • 戦後 アメリカ文化の洗礼をうけ、ピーコックグリーンなどの アメリカンカラーがはいってくる。

  • 60年代 カラーテレビの出現。64年のオリンピックが一般家庭にカラーテレビを普及させるきっかけとなった。

  • 80年代後半から90年代 「エスニックカラー」といわれるこれまでにない配色が街を 彩るようになる。 日本では戦後、芸術・文化は西洋志向だったのだが、 この頃からアジアの文化にも関心を持ち始める。 経済のみならず、文化の面でもボーダーレスナ時代へ突入した。

 


《用語解説》


純色 ― 一般に各色相の最も彩度の高い色
● 彩度 ― 色のあざやかさの度合い、または色みの強さの度合い
● パステルトーン ― 純色に白を混ぜていった色
● エスニックカラー ― トロピカルフルーツのような鮮やかな赤や黄、熱帯雨林を思わせるような色濃い緑をつかった色調



《考察》

  私たちは生まれ育った地域の気候、風土による地域特性に照応するように なっている。したがって、そこに暮らす人の「好きな色」というのは 自然と似てくるのである。こうして、国や、地域ごとに伝統色なるものが つくられ、それは、生活を彩っている。
  しかし、近年、輸入品や、異文化を持つ人たちの移住などによって、 外からの刺激をうけるようになり、特に、日本では「文化の輸入」が 盛んに行われているように思う。 ヨーロッパの街並みと日本のそれを比べてみると、それがよくわかる。 例えば、パリでは、建物の2階以上には看板や広告をつけてはいけないだとか、 看板に派手な原色を使ってはならないという規制がある。 また、国の伝統色を守ろうとする姿勢もみられる。日本でも、 京都市では街の落ち着いた景観を守ろうという考えから、 建築物と不調和な色彩を規制する条例がある。
  しかし、日本はヨーロッパに比べ、色に対して無頓着なところがあるように 思う。ネオンサインなどによる"騒色公害"という言葉が生まれたほどだ。 日本は、様々な色が氾濫し、色彩のサラダ・ボウルになってしまった。

 

《問い》

  その生活習慣や、見ている景色などから生まれた伝統色だが、 今それが失われつつあり、世界は異文化の色がまざりあうパレットのように なってきている。これから、コンピューターなどにより、 より多くの色が再現可能になってくると思うが、このことにより 民族のもつ色彩感覚というのも統一的なものになってしまうのだろうか?

 


《参考文献》
『色の秘密』 野村順一 /『色で売る』カラーマーケティング入門 高坂美紀
『自分を活かす色、癒す色』, 『事典 色彩自由自在』 末永蒼生 /
『色彩能力対策テキスト 3級』 全国服飾教育連合会