天の窓 スカイライトの問題機構

発表日:平成13年5月 日
発表者:松田 尚吾
〈要点〉
T:「ホワイトキューブ」の誕生(60年代のNYギャラリー)

「外部世界の侵入を拒絶するための通例では窓を設けることは 避けられているし、壁は真っ白に塗られ、そして天井が光源となる。」(ブライアン・オドハティ)

展示

  • 18Cのギャラリーは絵画が壁を埋めつくすように展示 :フレーム(額縁)の存在 = 絵画の自律性

  • 20Cのギャラリーは脱フレーム化 :壁が絵画を補完するものとして認知 = 壁の自律性

☆ホワイトキューブもモダニズムと同じく、過去からのひとつの重要な遺産である


U:「ライティング(採光)」の問題

ホワイトキューブに光り(自然光)を取り入れるには

    1. 窓 ← ホワイトキューブの理念に反する
    2. 側頂窓 ← プロポーションが問題
    3. 天窓 ← 外界と展示空間を遮断したい、窓を開けて採光を確保したいという

二つの願望を調停

↓ + 「レイライト方式」

さらに多くの問題を解決することができた


V:自然光を取り入れた美術館の例
    1. ロサンジェルス現代美術館(MOCA)
      太陽光の自然光と均質な光の自然光を所有
    2. ルイジアナ美術館
    3. メニル・コレクション
    4. YBG芸術センター
    5. 群馬県立近代美術館・現代美術棟
      三室とも採光の方式が違う
      : 中央の室は人工照明だけ
      最初の室はクリアストーリーからの光
      もう一つの室は集光室からの採光によって均一な照度をもてる



W:パーマネント・インスタレーション

→美術作品を特定の空間に恒久的に展示すること ≠ 「常設展示」
常設展示 = コレクター(美術館)の意向に従って作品を展示
パーマネント・インスタレーション = 作者であるアーティストが作品展示に関与



X:普通の「展示会」のデメリット
(パーマネント・インスタレーションにはそれがない)
    1. 期間が限定されている
    2. 作品を鑑賞する十分な空間が無い

移動での危険性

Y:インスタレーション・アートのメリット、デメリット

短所)制作、解体に手間や費用がかかる
    維持管理が難しい
    可動性、再現性に乏しい
長所)ある特殊のコレクションを持つことは現代の美術館では困難であるのに、
    ごく限定的な数の作品をコレクションとしてもつことができる。
    キュレイターの思想が直接反映できる
    アーティストが自らのアイデアを表現し、自然または建築的環境の中で、
    パーマネント・エキシビジョンの条件を提示できる理想の美術館である


Z:パーマネント・インスタレーションの美術館
    1. マットレスファクトリー
    2. チナティ・ファンデーション(ドナルド・ジャッド)


〈考察〉

  ホワイトキューブの誕生により、ギャラリーは脱フレーム化起こし ニュートラルな空間を作り出した。 それによって柔軟に作品を展示することを可能にした。 けれどそれには自然光をどのように 採光するかという問題がありいろいろと苦労をした。 一応解決したようにおもえるが問題はまだ残っている。
  現在ではアートの展示空間としてホワイトキューブは 絶対的な存在だとは言えないが、20世紀になって生み出された 展示空間としてホワイトキューブというスタイルを僕等が生み出したアートの 場の一つとして将来に誇るべきである。
  そして、パーマネント・インスタレーションはアーティストが自らの アイデアを表現した理想の美術館を、創造することを可能にしたこともおおきなる発展である。



〈疑問点〉
  1. 人工光による自然光の再現、演出は技術的には研究と試みの対象となっているが、 はたして人工光で自然光を再現することはそんなにも重要なのだろうか?

  2. 何故そこまでに芸術に永続性、永遠性を人々は求めるのか?

ここまでは文献のレジュメであります。 以下の文章は文献を踏まえた上での問題を、僕なりにまとめてみました。

  1. 自然光と人工光の違い 自然光:太陽光、天空光、月明かり、星明かり、など
    光のバリエーションが無限にある。(非物質)
    風にそよぐ木漏れ日のある一定の光の変化にも、雲の流れによる光の変化にも、 夕日のそのゆったりとした
    光の変化にも、しばらく身を置くことにいらだちを感じることはない(引用文)
    人工光:電球の光、ネオンの光、照明、電気の光など
    均一的な光
    新鮮味、感動、面白味を与えられる寿命は短い
    華やかではあるが、一過性のものに過ぎない

  2. ホワイト・キューブ ギャラリーのホワイト・キューブ化:あらゆるタイプの作品を受け入れるために、 個性を持たないニュートラルな空間にする必要があった。 それと自然光を取り入れる開口部をもつことも非常に重要な点となった。
    また、サイト・スペシフィック(作品が建築と一体化した空間)な空間を作る動きもある。

    けれどそれは皮肉なことに、無意識的にしろ意識的にしろ、 アートを限定する存在となっていった。街の中におかれて初めて機能する アートをホワイトキューブに押し込めたりしたり、本質的に展示されることを 拒むアートがあえてドキュメントという形で展示されたりした。
    →それぞれにふさわしい「場」から切り離されてニュートラルな空間で トラルな見世物にされてしまっていた。
    結論:ホワイトキューブという支持体にはそれにふさわしいアートが存在する。

  3. 白(ホワイト):清純と無垢の象徴で、平和、純粋、清浄といった イメージと結びついて、多くの場合は神聖とめでたい色とされる。白は汚れたくない、汚したくないという心理の表現として緊張感、 警戒心の象徴ともなる。
    また、汚れた、汚れてしまったものを元の白にもどしたいという心理の表現として後悔、失敗感、喪失感の象徴でもある。

  4. 美術館の抱える問題点

    T)不況下の美術館

    平成の不況下、美術館も歩みを合わせるように衰退している。
    美術館の無期休館、閉館、私立美術館はここ最近で10数館が閉鎖。
    公立美術館は予算が削られ、スポンサーがつきにくい結果、 作品を借り受けておこなう企画展示活動は行いにくい。
    → 対策として経費節減
    展示スペースの削減、開館日の削減、開館時間の削減。 それらはやむおえないこと。企画展示中心の考えから、所蔵品を見せるような 考えの移行。作品がかぎられる以上、同じ作品を繰り返し観てもらう必要があるし、そのためにはさまざまな角度で観てもらえるよう、展示構成にかなり工夫が必要。 その美術館の存在意義を確かにする必要がある。
    逆に、企画展示をしないことで、企画展示に裂いていた時間を他の活動 (未処理の所蔵品の整理や教育普及活動)を割り当てる。

    U)開館時間と新たな利用法

    今日のたいていの美術館は9,10時に開館し4、5時に閉館します。学生にはたいして問題にはならないが、 会社帰りの大人たちには開かれているとは言えない。「そもそも会社帰りに美術館へ立ち寄るのか」 発想の逆転、会社帰りによりたいような美術館作りをするべきである。
    今、はやりである、「癒し系」の美術館。ヒーリング効果のある美術館。 例えば、 立って作品を鑑賞するという発想を変えて、 座って作品を鑑賞してもらうように、おおくのフロアーに椅子を沢山配置した り、その椅子の質も改良してみる。
    さらに、美術館ではタブーな音楽を流してみたり、 あるいはアロマテラピーも面白いかもしれません。 美術館のカフェも最近増えてきているそうです。文化施設が安らぎの場所であってもいいのではないでしょうか。

    V)利用金額

    確かに元が取れないので高くなるのは避けられない。けれど低額金額にして、 来館者を今以上に増やせば、収入も増える訳だし、公立なら利用者がいれば、 逆に予算が削りにくくなる。
    一般の人が出かけるときに「美術館へ行く」という選択肢がなければいけない。 そのためには映画のようなペアチケット制や、半券割引制、会員制などをもっとふやすべきである。

    W)高齢化に対して
    高齢化は避けてとおれない問題です。作品を見ることが出来る人を対象に 考えてしまうので、どうしても忘れられがちである。 高齢化に伴いバリアフリーは必要絶対条件である。
    さらに、障害者への配慮も大切。聴覚障害者は作品を鑑賞できるので 美術館に訪れる機会も多い。覚障害者には音声ガイダンスや、 触れることが出来るような作品を確保するようにするのも考えるべき。 それらを支援する団体は「MAR(Museum Approach & Releasing)<マー>」 今後の活動に期待をします。