色が与える心理的・生理的影響

発表日:平成13年月日
発表者:古田 裕也
〈研究動機〉

  私達は日常の中で、様々な色を使い、また、色の影響を受けていることが多いのではないか?服装のコ−ディネ−トや部屋のコ−ディネ−ト、時にはあるお店で気に入ったデザインの服を見つけるが、その色が気に入らずあきらめることもあると思う。色は色そのものだけでは存在していない。コップの色、壁の色、服の色、何かの色と言うように色はいつでも単体では存在していない。色はそれ程重要ではないのかもしれない。しかし、私は色が人間に何かしらの影響を与えているように思える。そうでなかったら、なぜ、服装のコ−ディネ−トや商品を買う時等で私達は悩むのであろうか。そして、一面赤い色の部屋に閉じ込められても平気でいられるのであろうか。
 
もし、色が人に何かしらの影響を及ぼすのであれば、そういった影響を製品の開発、ましては、日々の生活等に利用できるのではないか。
 
そういった疑問を持ったのも自分の趣味としてPhotoshopで葉書や絵を作っている時に、毎回同じような色ばかりを使ってしまうことから始まった。他の色を使いたいと思って、いざ使ってみると、やはり納得がいかない事が多かった。色は、私達の感覚などに大きく働きかけているのではないか?

 


〈研究内容〉
色は人を映し出す鏡

  色の好みは人によって違う。なぜなら、一人一人の性格が違うようにその人の生きてきた環境が違うからである。その違いがその人の性格・個性を作る。例えば、ある時に着ていた服の色を「似合わないねぇ。」等と言われれば、その人はその服の色を嫌いになるであろう。嫌いとまではいかなくても、好きではなくなることが多い。逆に「似合うねぇ。」と言われれば、その服の色を好きになってしまうのかもしれない。また、病気がちの子供は病院の医者が着ている白衣の色から白色を嫌いになることがあるかもしれない。色の好き嫌いが千差万別であるならば、色の嗜好はその人を躊躇に表す媒体となるであろう。そうであるならば、色の嗜好からその人がどのような人かを考える事が出来るのかもしれない。


「何種類位の色が好きですか?」・・・質問@


そして、

「何色が一番好きですか?」・・・質問A

これらの質問からその人の性格が分かるそうである。(色の雑学知識参照)


*質問@について

この質問の答えからその人が「限定型」、「拡散型」、「分化型」のいずれに属するのかが分かるのである。

「限定型」:

1つか2つの色だけが大好きで、あとは嫌いと言う人であり、人間の心の中で道徳的な部分を担う超自我が発達しすぎているので、道徳一点張りの頭が固い人。  

「拡散型」

どの色も同じ位好きであり、まるっきり系統の違ういくつもの色が同じ位好きな人であり、本能に従って行き当たりばったりの行動をし、周囲によってコロコロと態度を変えたり、すぐに他人の言いなりになったりする。  

「分化型」

同じ系統の色がいくつも好きな人であり、「限定型」、「拡散型」の平均にあたり、バランスが取れたタイプ。

  なぜ、このような結果が出るのかと言うと、好きな色と嫌いな色とを大きく分ける事 は、物事を分ける能力であり、本能をコントロ−ルする自我が強い事を表しているから である。


*質問Aについて

別紙一覧表を参照

 


色の心理的・生理的影響

  上記のように、色はその人の性格を写し出す。そして、色はそのような能力だけではなく、人に心理的・生理的影響を及ぼすのである。
(赤) (青)

  暖かさを感じさせる赤系の色(色相表示)は、本来の大きさより大きく見えたり(膨張色)、前に飛び出しているように(進出色)見える。その逆に、寒さを感じさせる青系は小さく見えたり(収縮色)、後ろに下がって見えたり(後退色)する。
  人の色の好き嫌いは時には変化する時もあり、例えば、急に緑色が好きになったのなら、その人はリラックスしたい等の欲求を持っていることになる。それは、ストレスから身を守り、身体を正常に動かすため、そして、いち早く、色からのメッセ−ジを受け取るために起こるのである。

  なぜ、色を見て、緑ならば休息などのイメ−ジを持ち、また、気持ちが安らぐことが起きるのか?それは、その人が今まで休息をとるために訪れた場所の風景の色が記憶として、その人の心の中に残っているからである。だから、人によっては休息の色を他の色で答えるかもしれないが、いくつか色を挙げてもらえば、その中に共通の色が存在することが多い。このような現象は今のところ解明されていないが、もしかしたら、テレビや広告などのメディアが大きな力を持っているのかもしれない。なぜなら、「休息するなら山や海に出かけよう!」などの広告を目にすれば、そこにある色、緑や青などが休息をするための色であるという記憶を植え付けられてしまうのである。

 

色はなぜ見えるのか?

  太陽(光)は加法混色による7色のスペクトルであり、それ故、全ての色が混ざると白色になる。7色といっても細かく分ければ数多くの色が存在する。ただ、大きく分けると太陽(光)は7つの色を持っているのである。そして、太陽(光)が無ければ私達は色を見る事は出来ない。物体に光がぶつかるとその中に光が吸収、透過され吸収されなかった光が反射をし、私達の目に届く。その光の色を私達は色として認識しているのである。

→なぜ、物体によって見える色が違うのか?それは、エネルギ−説によって説明することが出来るが、それが確実な説であるかは分からないのである。


太陽光と人工光は光の色が違う

人工光・・・白熱光と放電光があり、白熱光は赤色っぽい光になり放電光は青色っぽい光になる。    

→屋内と屋外では同じ色でも違って見えてしまう。白熱光の下では赤色っぽく見え、放電光の下では青色っぽく見えてしまう。


*スペクトルは色によって大きさが違う

  人間には、不可視光線(人体にとって有害)を見る事は出来ず、目に見える可視光線のみを見ている。光の色(種類)によって、長さが違い、短いなら短波長、長ければ長波長に属する。単位はnm(ナノメ−トル)で、1nmは10億分の1m。短波長ほど屈折率が大きく、短波長の青は約480nm。この大きさの違いが重要。

→自然界のあらゆる現象が起きる原因。


青空大気中の水滴が小さいため、短波長だけが水滴に屈折して入り込み散乱する。
     そのため青色系に見える。(レイリ−散乱)

曇り空大気中の水滴が波長よりも大きく、全ての波長が水滴に屈折して入り込み散乱を起こす。(ミ−散乱)


夕焼け長波長の赤色の光は屈折率が小さいので遠くの見ている人の目にまで届く。

光沢面入射した光が一定方向に反射される。(正反射)

無光沢面表面が凹凸なため入射した光が不規則な方向に反射される。(拡散反射)

光のスペクトルが水滴によって屈折され、そのまま色として見える。だから、屈折 率が大きい紫や青色は虹の内側に屈折率が小さい赤色は外側に見える。
  ⇒虹は7色であるが、国によって6色だったりする理由は文化の影響があったりす るがそれ以前に、虹の見え方は水滴の大きさなどの気象条件が大きく左右する。 それ故、国によって、又はその天候によって虹が何色に見えるかが変わるのでは ないか。


*2種類の色の特徴

  劇場に行くとスポットライトが赤、緑、青の3色だけが設置されていることがある。 そして、その3色が全て照らされると白色になる。しかし、絵の具の赤、緑、青を混 ぜても白色にはならず、黒色になってしまう。それは、光と塗料(色材)の色の配色 は違うからである。
  それらの色はそれぞれ3つの色(三原色)をもっており、それらの色の組み合わせ により、様々な色を作ることが出来る。

  • 光の場合
    三原色は赤、緑、青であり、3色を混ぜ合わせると白になる。
    光は混ぜれば混ぜるほど明るくなるので光の混色を加法混色という。

     赤+緑+青=白  赤+緑=黄  赤+青=赤紫  緑+青=青緑

  • 色材の場合
    三原色はイエロ−、マゼンタ(紅)、シアン(藍)であり、3色を混ぜ合わせると黒になる。色材は混ぜれば混ぜるほど暗くなるので色材の混色を減法混色という。

     マゼンタ+黄=赤  マゼンタ+シアン=青  黄+シアン=緑  マゼンタ+シアン+黄=黒

これらの色の違いは光の場合はテレビなどに、色材の場合は絵の具や写真などに見られる。


*観測状況による色の変化

同じ灰色でも左と右とでは右の灰色の方が明るい。(明度対比)
右のオレンジの方が赤く見える。(色相対比)


等が起こり、このように色が相互に影響しあい、相違が強調され、単独で見た場合と異なって見えることを色対比という。この影響には上記以外に彩度対比、縁辺対比、補色対比、残像現象などがある。

 

*残像現象

  例えば、緑のウサギを暫く見つめ、その後に背景が白 の籠の絵を見ると、そこにはあるはずの無い赤い ウサギが見える。これは、色相環において、その色 とまったく逆の色、つまり補色にあたる色を見せる ことで目に疲れをためさせないようにする現象であ る。補色には、緑⇔赤、青⇔黄、白⇔黒などがある。


*視認性・誘目性

  また、色同士の組み合わせは、色の目立ち方(視認性)をさらに強調させる。一般に、明度差の大きい黒と黄、黒と白の組み合わせは視認性が高い。黒と黄の組み合わせは踏み切りなどの危険があるところに使われている。そして、人の目を引く色(誘目性)は彩度の高さに影響される。


*プルキニエ現象

  明るさによっても色の見え方が変化する。例えば、赤と青の2色を見た場合、明るい所では赤の方が目につきやすいが、暗くなるにつれ青色の方がみえやすくなる。
⇒夜間の黄色の服の効果への疑問

  色はこのような能力や変化をもっているのだが、今回の研究報告では多くても2色までの色の組み合わせによる能力や変化の現れ方を勉強した。それでは、さらに多くの色の組み合わせでは、また違った能力や色の変化が起きるのではないか?また、さらなる色の知識を身につけること、そして、そういった色を実際に使用することも今後の研究にしたい。

 


〈疑問点〉
  • 人は皆、ある色を同じ色として認識できているのだろうか?

  • テレビは製造会社によって肌の色が違く見えたり、パソコンで画面の絵をプリントしても色が違く印刷されてしまうことが多い。それならば、どの色が正しく、また基準になっているのであろうか?

 


〈用語解説〉

色相・・・・その色の種類。色味。

明度・・・・色の明るさを表す度合い。目に感じる光の強弱を示す量。

彩度・・・・

色の鮮やかさの程度。それぞれの色について、白、灰、黒の混ざっている度合。これらが混ざらないほど、その色は鮮やかになる。

スペクトル・・・・

目にみることができる可視光線の単一波長だけを含んだ光を単色光と呼び、これが波長の順に赤、オレンジ、黄、緑、青、藍、紫と並んだ光の色の帯びのこと。

エネルギ−説・・・・

全ての光がいったん自然界のものの中に入り、そのものは自分に必要な光を吸収する。そして、その中には、必要とされない光もある。その吸収されなかった光が我々の目に届く。その時にその光が緑色ならば、私達の目にはその物体が緑色に見えるのである。人工的に作られたものにこの説はうまく適用できないという問題点もある。

nm・・・・ナノメ−トルと読み、光の大きさの単位。

 
参考文献
渡辺祥子『色の雑学知識』、曜曜社出版、1995年
末永蒼美『色彩心理の世界』、PHP研究所、1998年
井坂勝美『色のメッセージ』、大和出版、1999年
堀田智木『色彩検定書』、新星出版社、2000年
堀田智木『カラーコーディネーター検定書』、新星出版社、1999年
色と人間の不思議な関係(サイエンスト−クより)


別紙
〜質問Aについて〜

外効性の人が好む色で、また、活発に体を動かしたい時に欲する色。人生を思いっきり生きたいと望み、外界への関心も旺盛で興味があることには迷ったりせず、敢然とチャレンジする。感情の起伏が激しくて腹を立てやすいのだが、すぐに機嫌を直し、根に持つことはすくない。

内向性の人が好み、また、気持ちを落ち着けたいときに欲する色。理性的に良く考えて行動し、自制心が強く、人に軽はずみだとか思われないように言動や服装にひどく気を使ってしまう。粘り強く、勤勉なのだが、反面で自分は正しいと自信が強くなりがちである。

精神的に冒険好きで困難な課題に進んで探求しようとし、自己実現の場を求める。明るく、天真爛漫、ユ−モアのセンスがあるが、習慣や常識に縛られずに自由でいたいという気持ちが強いのでわがままや自己中心的な人と見られがちである。また、誰かに甘えたり、愛されたい時に欲する色。

赤と青の両方の特徴をもつ。何事にも中位でいようとするが、我慢強く、社会意識や道徳意識が強く、人に気を使う面もある。また、休息や、眠りたい時に欲する色。

青緑

繊細な感覚の持ち主であり、感性豊かでファッションなども洗練されているが、一方でデリケ−ト過ぎるためか、人付き合いが苦手で気難しいと見られる事もある。

オレンジ

元気で明るく、にぎやかな人である。人柄が良くいつもニコニコしていて親しみやすく、どんな人とでも仲良くなれる才能がある。一人ぼっちでいるのは嫌いで、人なつっこく、社交的ですが、激しい熱情はあまり無いことが多い。

ピンク

女性が好きな色。柔軟で愛情がこまやか、よく気配りをする人ですが、デリケ−トで女らしいように見せたいという気持ちが強く、人から愛され、守られる事を求めています。

夢物語のようなワクワクするようなことが無くても、生活が安定している事が一番と考え、変化を好まない。物質的な豊かさや肉体的な健康を求め、気取ったりすることもなく、地に足のついた生き方をして、人から信頼されることが多い。

芸術家や神秘主義者がよく好む色で、感性と直感力に優れ哲学者肌のところもある。神秘的なものに引かれ、自分でも神秘的な所があると思っている。そういった自分の特質や才能を人に認めてもらいたいという気持ちがつよい。また、人と違うことをしたいとか、疲れを癒したい時に選ぶ色である。

真面目で堅実、分別があり、組織やシステムといったものを大切にする。人には親切であるが、親しくなることを避け、控えめに人の役に立とうとする。感情よりも大切なものを放棄して、個性を押し殺すときも多い。また、神経質になっている時に欲する色。

誠実で素直な人が多く、潔癖で不正を憎む気持ちが強いので、常に完全を好みやすい。気高い理想を抱き、清く正しく生きたいと思っている。また、スポ−ツやひなたぼっこをしたい時に欲する色。

心が傷つきやすく、自分の本当の気持ちを隠したがる。人と関わることを避け、自分の世界に閉じこもろうとする一方で、人に有無を言わせぬ威厳を示して強く見せたいという気持ちがある。また、神秘的な雰囲気を漂わせたり、洗練されているように見せたい人もこの色を好む。