個人 研究発表プレレジュメ03 「叫びのフリーペーパー」
 

●はじめに 〜個人発表の計画および議論点〜 ●

発表の指針
私は、以下の内容に沿い、主にフリーペーパーについて調べたことを発表する予定ですが、重要なのはフリーペーパーをみなさんに紹介するだけではなく、そこから何が導き出されるかという事を提議することだと考えています。ですから、発表当日は具体例や考察的な事柄に力点を置いてプレゼンテーションするつもりです。そのため、口頭説明が必要な部分も幾つかあるとは思いますが、プレレジメの段階での基本的な情報は、疑問点等も合わせて念頭に入れて置いてください。
尚、これまでの研究や論文についても言及するつもりですが、一応今回の発表にも通低しているので目を通してきてください。そして、みなさんの反論や疑問点、考えを議論の時間に限らずに聞かせてください。

導入 〜只より高い物はない!?〜
何年か前から、街ではティシュペーパーが配られ、電車は広告をたくさんぶら下げるようになった。最近ではクーポン付きの情報誌を、駅前にいるお姉さんが元気一杯にキャンペーンめいて手渡ししてくれる。アルバイト情報誌なんかもタダで手に入る。こんなすっかり風景として馴染んだ事柄は、フリーペーパーについて考える上での重要な伏線だ。
 では、フリーペーパーとは何か。端的にいえば無料情報誌なのだが、冊子の形になっているのか否かという区分だけを提示するその呼称だけでは全体像をつかみ辛い。私の考察的な観点ではむしろ、どんな情報がどのような形で私たちの眼前に差し出されるのか、という問いが中核にあるのだ。

考えてきて欲しい事柄
以上のことを踏まえ、「どんな情報がどのような背景で無料になっているのか」という視点から自分自身の生活も視野に入れながら考えてきてください。発表当日に、みなさんの考えと、「戯れ」のフリーペーパーという項目で私が示したかった事を加味した形で、再度議論点を少し発展させた形で挙げたいと思います。そして、そこでは「良いか悪いか」という判断に関するような考察も重要であると考えています。(また、「ポストモダニティの条件」は少なからず、今回の発表と関係があるような気がしています。)


●フリーペーパーについての概要● 

無料のメカニズム
・ 広告収入や自己負担

発行目的の大別
・ 地域広告の獲得(生活情報誌)
・ 特定マーケットの開発(絞り込み情報誌)
・ 電話、テレビなど他のメディア情報を柱にする事による地域広告の獲得
  (メディア・ミックス型の情報誌)
・ 新聞社系などによる本紙の拡充支援(サービス情報誌)
・ 企業、地域団体などによる地域コミュニケーション(コミュニティ情報誌)

流通方法
・ 個別宅配
・ 新聞折り込み配布
・ スポット設置による配布(職域、キャンパス、カルチャー施設、店頭、公共施設等)


●マーケティングとしてのフリーペーパー●

マーケティング手法の潮流
・ IMC(Integrated Marketing Communication)
・ ダイレクト・マーケティング
・ マスからローカルへ


広告媒体としての特性
・ 地域の絞込みができる
・ ダイレクトに配布できる
・ ターゲットにあわせた情報の絞込みができる
・ すぐに効果がでる
・ クーポン券などのサービスがつけられる
・ 低料金でコストがかからない
・ ダイレクトにコミュニケートできるので、顧客リストを把握する事が簡単

主だった内容の様子
・ 地域情報や衣食住などの生活情報が多い

主な流通の方法
・ 個別宅配、新聞折り込み、街頭での配布

特徴
・ 発行元−会社、企業
・ 広告主−会社、企業
・ 内容−読者参加型、限定的


「戯れ」のフリーペーパー 

(広告の獲得やマーケティングが第一の主旨ではないような身振りのフリーペーパー)

主だった内容情報の大別
・ エコロジー、レイブカルチャー
・ 政治、社会
・ アート、音楽
・ その他 

主な流通方法
・ 店頭
(クラブハウス、ライブハウス、古着屋、セレクトショップ、レコード店、オルタナティブスペース等)

特徴
・ 発行元−個人やグループ、上記のようなお店に関する会社
・ 広告主−個人やグループ、上記のようなお店に関する会社
(広告を掲載しないものも多い)
・ 内容−カウンターカルチャーの流れを汲むものが多い


●「戯れ」の系譜●

禁止される告知
・ アンシャン・レジーム期からフランス革命に至るまでのポスター

政治的運動と落書き
・ 60年代の反体制運動における落書き
・ カルチャー・ジャム


●語句● 

・IMC(Integrated Marketing Communication)
統合型マーケティング・コミュニケーション。マス広告やSP、PRを有機的に統合させ消費者の立場からコミュニケーションの再構築を図るという理論。1980年代末のアメリカで生まれる。

・ダイレクト・マーケティング
あらかじめなんらかの絞込みをすませた顧客=市場にアプローチすること。

・マス広告
新聞、雑誌、ラジオ、テレビのマスコミ四媒体に露出される広告。

・SP(Sales Promotion)
マスコミ四媒体を利用した広告とは別の販売を促進するための手法。

・PR (Public relations)
公共の関心事について公衆との間に良好な関係をつくりあげる活動。本来、企業や政府などが社会的責任の遂行や公共利益への寄与という理念を実際の諸活動に反映させると共に、組織の内外に対して行う双方向性のあるコミュニケーション活動を指す。

・カルチャー・ジャミング
「文化妨害」。例えば、ビルボードに落書きするという「記号論的ゲリラ」。




●参考文献●
「Theフリーペーパー」山中茉?著 電通
「ブランドなんか、いらない」ナオミ・クライン著 松島聖子訳 はまの出版
「現代思想 特集グラフィティ」青土社
「ポスターの歴史」アラン・ヴェイユ著 竹内次男訳 白水社
「10+1 特集街路」INAX出版