―学校空間の現状―
・矩形の箱
・重い閉塞感・画一性
・トータル・インスティチューション的な性質
・約100年間変わらない学校建築の原型
・ゆとり教育や総合的学習の時間などの教育内容の改革
→教育の中身の多様化に伴い、“器”としての学校空間にもより柔軟性がもとめられているのではないだろうか。
→理想的な学校空間とはどのようなものだろうか?
A−1.学校内において
・教室は壁によって覆われており、廊下からでは中の様子がつかめない。
・小学校はクラス担任制のため、より閉鎖的な環境が作られやすい。
B−1.学校と地域との関係
・学校とは聖域であり、部外者は立ち入ることが許されない。
・学校はそこで行われている教育の営みについて、地域社会から意見や批評が 起きることを恐れ、外部の目が入ることを嫌がる雰囲気さえある。
・全国一律の学校指導要領に縛られ、地域社会の特殊性や多様性によらず、全 国で均質な教育が行われている。
→学校空間とは、教えやすい、管理しやすい、という観点だけで作られており、重い閉塞感によって覆われている。
→『学校はまち 教室はすまい 学校は思い出』
B−2.学校の複合化
公立小・中学校と生涯学習施設、または高齢者施設などが一体的に建設されること。
〔意義〕
・生徒と地域の人々が「学校」を舞台として自然に触れ合える環境
・互いに高度な施設・設備を共有することができる。
・核家族の中で育った子供と生きがいを求めるお年寄りの双方に精神面で好ましい影響。
・少子化によって余裕の生じた学校施設の一部を、高齢化施設として再生・活用していくことは理にかなっている。
→子供からお年寄りまでもが共に学び、生活し交流する場へ。
わたしは以上のようなことを受け、「学校とはまち」である、と考える。もともと、まちや社会には、様々な属性や価値観の人々が混在しながら共同体を形成している。この価値観を学校に持ち込み、学校をさまざまなコミュニティー活動の場として機能させることが、未来の学校に求められている姿なのかもしれない。また、まちが多様性を含んでいるならば、学校にも多様性を求めてよいのだと思う。つまり、これからの学校はこうあるべきである、などと決め付けるのではなく、それぞれの地域に適した、それぞれの学校の理想に適した、そういった空間を模索し続けていくことが必要になってくるのだと思う。
用語解説
・「トータル・インスティチューション」
社会学者E・ゴフマンの提唱した概念であり、これは、社会から隔絶された空間の中でそのメンバーの社会生活全般を統率することで社会化・再社会化をはかる機関を指すものである。例えば、修道院・刑務所・精神病院などがこれにあたる。
・「象設計集団」
U研究室で出会った大竹十一、富田玲子、樋口祐康の3人によって1971年に作られた設定集団。一人一人が個性を持ちながら、集団で作っていく事を目指している。彼らの仕事は、名護市庁舎(沖縄)、今帰仁村中央公民館(沖縄)、時計ビル(東京)、宮代町進修館コミュニティーセンター(埼玉)などなど多岐に渡る。
参考文献
・「未来の学校建築」上野淳・著、岩波書店、1999.11
・「《現代の建築家》象設計集団」SD編集部・編、鹿児島出版会、1987.4
・「これが建築なのだ」OJ会・編、大日本印刷、1995.9