空間の生産 〔D班〕

発表日:平成14年5月8日
担当者:船越瞳・久保田早紀・松田尚吾

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〈要約〉

@〜C
空間はどのように捉えられてきたか

<現在(といっても少し前)>
空間の概念 = 地理学的;「ユークリッド的」「等方的」「無限的」
→ 数学につまり科学にだけ属するものだと考えられていた
<以前>
空間の概念 = 哲学によって長期間練り上げられてきた

  1. デカルト:アリストテレスの伝統(空間と時間はカテゴリーに属している)に終止符
    空間 = 絶対なるものの領域 → 感覚と身体を支配する
    ("客体"/"主体" ・"延長をもつもの"/"思惟されるもの")

  2. スピノザ・ライプニッツ・ニュートン主義者
    空間 = 「神の属性」 or 「存在するものの全体性に内在した秩序」

  3. カント
    空間 = 相対的・認識の道具・現象を分類する手段
    → 意識(主体)の先験的領域に意識の内部的・理論的構造に超越論的な、 本質的に把握不可能な構造に結びつけられている

  4. 数学者たち:空間の無限性を発明(非ユークリッド空間・x次元の空間 etc.)

  5. 認識論哲学者(近代的研究)
    空間 = 「心的な事物」「心的な場」<集合理論> = 「心的空間
    "科学的規定"と"空間領域"はあらかじめ前提された結びつきによって 互いに「構造的に」結びついている
    ("空間の規定"/"「主体」の規定" ・ "考える「わたし」"/"考えられる客体")
    空間 → 物神化され、心的な領域が社会的・身体的な領域を包み込む
    <「理論的実践」は心的空間を生み出す>
    結果:空間の記述・断片化・裁断 ← <空間に関する言説であって、認識ではない


・「空間の科学」の提言

  1. 知の政治的な利用を意味する(直接的 → 生産諸力・間接的 → 社会的生産関係)
  2. 知の政治的な利用を包み隠すイデオロギーをともなっている
  3. 科学技術のユートピアを含むだけ


Dシステムは元からあったり不滅のものではなく、空間によって生成されるものである。
  よって資本主義が多様性と統一性を併せ持つもつという矛盾は、システムの不滅性では説明できない



E統一理論とは。統一理論を物理学社会的実践の認識にあてはめてみる


F具体的普遍性は「生産する」ということに存在する。では、空間における「生産」とは


G筆者が解き明かしたいこと:空間とそれにより生成されたものを統一して空間そのものの現実的な生産を解き明かす。
  コードの形成、解読、消滅に関わる空間の意味


H空間の統一的な理論を解き明かそうとした人々の例
  シュルレアリスト、G・バタイユ、ジャック・ラフィット


Iヘーゲルの哲学により、空間は国家へ奉仕されるものと物神化(不動化)され、 それ以降の哲学者(ニーチェ、マルクスetc.)は、空間について語ることが出来なくなった。
  そのため、空間統一理論の探求は放棄され、時間の復権を求めることが余儀なくされた。
  ところで、われわれが立ち会っている現代空間は、ヘーゲル、ニーチェ、マルクスの相対する統一理論を併せ持っている。
  よって、近代世界を解き明かす諸理念と諸提言を互いに付き合わせることが重要である。


J生産物の研究から生産の研究へ移行することが必要である。
   空 間     空間を生産すること

(社会)空間とは(社会的)生産物である。

これが真実であるとき、この事実は透明の幻想不透明の幻想によって包み隠される。

  •  透明の幻想・・・純粋に空虚な場。行動にとって自由な場。
             この空間という媒体は透明で,話し言葉や、書き言葉に余計な意味を加えない。(現代文化第1回講義参照)
             ≒観念論
            

  • 不透明の幻想・・・今見えているものが空間。
     (現実主義的)   物があるから空間である。
            不透明=権力、体制・・・etc.
            ≒唯物論
    空間に対する、この2つの幻想があるため、空間の認識を論理的に探究することは難しい。

〈考察〉

  どんな人間でも直接見たり、聞いたり、触れたりしているのは自分の周囲数十メートルの範囲だが、 私たちは必ず、この直接見聞きしている範囲を超えて、世界全体の漠然とした像を頭の中で 描きあげようとしている。
  部屋の外が街であり、街の向こうには日本の社会が広がっていて、海の向こうには世界が広がっている とぼんやり思い描いている。これを空間的な思い描きと考えてみよう。
  このことは多くの哲学者が探求してきた(時間的な探求も含め)。空間には様々な表象がある。
  じつは私たちは知らない間に互いに重なり合い、ふくみこみあい、隣接しあった莫大な数の空間に 直面しているのに気づいていない。
  著者はこの論文で空間の生産についての言説を生産するのではなく、 多くの空間とそれらの空間が生成する様態を一つの理論にまとめあげることによって、 空間そのものの現実的な生産を解き明かそうとしている。そこであらかじめ「空間を生産する」という 仮設を立てて、空間の生成・消滅を明らかにしようとしている。
  空間は諸分野に分割され論じられてきたが、その諸分野に分散した空間は具体的普遍性を持たせることに よって統一できるのではないか。
  具体的普遍性というのは、諸種の空間とそれに伴う様態を一つの理論にまとめることで、 諸種の(分割された)空間に共通の部分があらわれるということである。
  この普遍性とは、空間はただの受け皿という意味を持つものではなく、空間が様態を生成しまた、 その空間もさまざまな様態、現象などから生成されているものであるというようなことである。
  この生成された様態(コード)のみを人間は実体として感じることができる。 実体は生成されたものなので空間そのものではないが、そのコードを読み解ければ その空間を理解することができる。
  そして、筆者はこのコード形成と解読、消滅のなかでの空間の意味を考えている。
  作者は、かつて、認識するために分割されてきた空間の統一的な認識理論を追究しようとしている。 これはまったく新たな試みであるように思える。そもそも私たちがあ  る空間を思い浮かべる時、 それはすでに分割され切り取られた一部分の空間であり、人の思考から宇宙まですべてが つながっている空間ではないからだ。
  しかし、空間が全く無から生まれるということに関して、私はビッグバンを想起した。 ビッグバンにより宇宙空間は生まれ、あらゆる星が生成されてゆく。 ただし、ビッグバンが起こった時点で、それを認識することのできる存在はないだろう。
  つまり、認識する存在がいないのだから、空間は存在しえない。 空間が存在しうるのは、それを認識することができる私たち人間の存在があってからだ。
  しかし、また人間が存在しえた時点で、人間は空間をすでにあったものとして認識し、 透明な幻想と不透明な幻想に立ち返ってしまう。空間の生産とその認識の関係は、言語と認識の関係と 同じ問題に陥る。


〈疑問点〉
  1. ルフェゲールがこの論文を発表した当時は、まだコンピューターの概念、 つまりインターネットのネットワークは存在していなかった。
    ルフェーゲルの立場をとるならば、インターネット上で空間は生産され、また存在するのだろうか。

  2. 音によって空間は生産されるのであろうか。
〈用語解説〉
  • ユークリッド
    普通の三次元空間

  • デカルト
    主観(見る自己)と客観(見られる自己)
    (精神と物(物質)二元論である

  • スピノザ
    唯一の「実体」である神が世界であり、世界は自然(一元論)

  • ライプニッツ
    数学的記号で世界の言語を認識しようとした。
    普遍的記号法、二進論の発見、計算機の発明など(多元論)

  • ニュートン
    世界を「機械」と捉えた。
    物質の最小単位と運動の法則を作ったのは神であるが、その位置と運動量が理解できれば、 物質の過去も未来も確定的に知る

  • カント
    「純粋理性批判」「実践理性批判」「判断力批判」

  • シュルレアリスム
    一九二四年のA・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」によって組織された、 美術や文学、映画などにわたる、パリを中心にした前衛芸術運動。
    宣言では「思考の真の働きを表現しようとする純粋に心的なオートマチスム」と定義されるが、 ダダから継承した方法(オブジェ、コラージュ、偶然性の利用など)を、 フロイトの説を受けて無意識の世界の探求に結び付けた運動といってよい。

  • ヘーゲル
    ドイツ古典哲学の代表者。

  • G・バタイユ
    フランスの思想家・社会学者・作家。