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美しさを「哲学」する——分析美学入門
私たちは、日常生活の中で、自分の意思や意図、気持ちや欲望を表現しています。例えば、ある人たちは、Facebook、Instagram、x(エックス)などのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を用いて、不特定多数の他者に向かって自分の意見や考えを述べたり、写真などを載せたりします。また、比較的小規模で近しい間柄のグループでは、LINEやメールなどを通じて、自分の気持ちや感情をLINEのスタンプや絵文字を使って表現します。
このように私たちは、様々な情報ネットワークを使って、自分の気持ちや思想の表現を、文字だけでなく記号や絵や写真などを用いて、他者に向けて発信したり、他者からの表現(物)を受信したりしています。
本演習では、それを「思考のパフォーマンス」あるいは「思考のパフォーマンス表現」として捉えて、深く考えたり実践したりしていきます。つまり、私たちの日常的なやり取りのひとつひとつを「思考のパフォーマンス」や「思考のパフォーマンス表現」として捉えることが重要になります。しかも、私たちの日常のたわいない会話や行為は、実は社会や世界を変える「力」を秘めています。皆さんが発した言葉や、体や表情で表現する「パフォーマンス」は、権力をもつ為政者よりも、時には大きな「力」をもち、たくさんの人の心を動かし、社会そのものを変える力になります。
皆さんが用いるSNSは、気づかないうちにグローバルな世界と関わっているのだから、国境や言語、人種の壁を越えて、どこかの誰かが、皆さんが知らないうちに、皆さんが書いたものや、写真や動画で表現したものを見ています。それゆえ、皆さんが流す「思考のパフォーマンス」に影響されたり、行動を駆り立てられたりする人たちもいるでしょう。いついかなるときにも、また誰の身にも起こるため、避けられません。
だからこそ、私たちは自らの「力」を不要に不当に使うべきではないのです。私たちの狭い人間関係だけで、社会や世界は成り立っていないからこそ、私たちは、SNSだけでなく、私たちの身体表現や言葉を介した様々な「パフォーマンス表現」が、良い方向にも悪い方向にも社会を変える「力」があることにもっと自覚的になる必要があります。
そこで2025年度の森村ゼミでは、私たちの個人的な表現が、直接的に社会にコミットしていく在り方を、「美しさ」や「美意識」という側面から「哲学的に考える」ことを試みます。